僕の好きな哲学者・ショーペンハウアーは「年齢の差異について」の中でこのようなことを言っている。
「若い人は直感がすぐれているから詩に適しており、老人は思考がすぐれているから哲学に向いている。若者には憂鬱と悲哀があるが老人にはある種の朗らかさがある。若い人は不安だが老人は平穏。独自の認識は若い時に持たねばならないが、偉大な著述家の傑作は50歳頃からうまれる。」大学生になり、このショーペンハウアーの語る若い人から徐々に大人への道を歩み始める僕達は、 思考するという高尚な力が磨かれていくとともに、直感という素晴らしい能力を忘れていく。
新聞を眺めていて、ふと目に入った詩人・谷川俊太郎の名前。
僕が昔好きだった彼の詩を久々に読み返した。10年ぶりくらいに読んだ。
「20億光年の孤独」「朝のリレー」
あの時とは、また違った感情が胸の中湧いてきた。
僕はまだまだ若い人。不安だって、憂鬱と悲哀があったっていいじゃないか。直感があるのだから。そんな気持ちになった。
二十億光年の孤独 谷川俊太郎
人生は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で
なにをしてるか 僕は知らない
(或は ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
朝のリレー 谷川俊太郎
カムチャッカの若者が
きりんの夢をみているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝返りをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウィンクする
この地球ではいつもどこかで朝が始まっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交代で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受け止めた証拠なのだ
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