紅葉が美しく色づくには3つの条件があるという。昼間の日差し、夜の冷気、そして水分である。悩みと苦しみ(冷気)に打ちひしがれ、数かぎりない涙(水分)を流し、周囲からの温かみ(日差し)に触れて、人の心も赤く、黄色く色づく。紅葉の原理は、どこかしら人生というものを思わせぬでもない。(後略)
本日の朝日新聞の朝刊のコラム『天声人語』より、一部引用。
紅葉は山海の恵みにも似て、はしり、さかり、なごりの各段を踏む。緑があせ、赤緑の錦が乱れ、色が散り敷かれる。(中略)昼夜の温度差、程よい湿度と陽光が色を磨く。葉の彩りは残暑から秋冷への急坂を転げ、時雨に洗われて深まる。秋が短い今年は木々の見せ場も重なる。東京の街路樹はケヤキ、サクラ、ユリノキあたりが散りぎわの芸を競う。真打のいちょうも盛りが近い。(中略)毎年、ホップ、ステップ、ジャンプの順で巡る季節がやけに頼もしい。一歩進んで二歩下がるような、人の世を見るにつけ。
日々のランニングでは、街路樹の移りかわりを見ながら走る。最低でも1週間に1度は同じコースを走っているので、劇的な変化というものはないはずだけれど、ふとした瞬間に「あ、イチョウがこんなに黄色くなってる…」といった気付きがある。
神宮外苑の銀杏並木もそろそろ見頃だろうか。来週か再来週あたりにでも、晴天の日を狙いすまして散歩に行きたい。よく晴れた日の東京の秋の青空には、イチョウの黄色がよく映える。
研究の中間発表が昨日終わり、少しだけ心に余裕ができたので今日は前々から行きたかった東京都美術館展へ行って来た。展示は、『メトロポリタン美術館展』。ニューヨークのセントラルパークに立つメトロポリタン美術館から、大地、海、空―自然をテーマにした作品が展示される。ゴッホの描いた有名な『糸杉』が目玉であったけれど、それ以外にもたくさんの素晴らしい作品が集う。その中で僕が一番「いいなぁ…」と感じたものが、アメリカの風景画家ウィンズロー・ホーマーの《月光、ウッドアイランド灯台》。
月光と名前があるけれど月は描かれておらず、灯台とあるけれどそれは画の奥にたったワンポイントの赤色で載せられた点だけで灯台の存在を示す。
ホーマーの名前は今日はじめて知ったけれど、次の展示からは彼の名前を探してみたい。こうやってお気に入りの画や画家が少しずつ、少しずつ増えていく。絵心皆無でアートを学んだことがない僕でも、最近少しずつ、人々が美術を慈しむ理由がわかってきた。
上野まで、秋の日差しに包まれてのんびりと街や人を見ながら自転車を走らせた。よく晴れた秋の陽の午後、日曜日の午後って、本当に素晴らしい。街が幸せで溢れているように感じる。この幸せが何よりも大事なのだと思った。僕はイエスとかブッダとかある特定の大きな神様の存在はあんまり信じていないけれど、一週間に一度の安息日を設けてその時間を大事な人と過ごしたり自分のやりたいことを過ごすような社会の制度をつくった、昔の頭のいい人は偉大だと思う。
さて、また新しい一週間が始まる。パワーチャージ完了。毎日を真剣に、丁寧に、楽しんで生きていこう!
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