3/17/2015

『地球の歩き方』という地球の上

パソコンとカメラを盗まれたと同時にアルゼンチン・チリの地球の歩き方をも失ってしまった。ウユニ塩湖で出会った日本人(18歳の世界一周バックパッカー!)と、「地球の歩き方がないと物価の目安も地図もなくて旅が大変だよね」なんて話をしていたけれど、前言撤回したいと思う。地球の歩き方なんかなくても、旅は楽しい。

チリのサンティアゴの街中を歩いていたら、美しい漢字で名前を描き銭を稼ぐ日本人パフォーマーがいた。話をしてみると、彼/彼女達も世界一周旅行の最中であるという。どこに泊まっているのかという話になり、街の外れのブラジル人街(アタカマのホステルで知り合ったイスラエル人オススメのホステル。綺麗、安い、しかしラブホテルの隣という立地)だと言うと、驚かれた。
「そんな場所があるんですか!私たちは街の中心のパレスホステルです。歩き方に書いてあったところで、日本人の方も多いですよ」と。どうやは僕は『地球の歩き方』の外側の地域に宿をとっていたらしい。確かにアクセスは悪かったが、この町に生きる人に近い楽しい場所だった。



その後のブエノスアイレスでも現地の友人が終日ツアーガイドとなってくれ街を散策、夜は彼女の家で友人も集めたパーティを開いてくれ、『歩き方』には掲載されていないであろうローカルを満喫した。アサード(アルゼンチンのソウルフード、ステーキ)を購入する目安は1人につき0.5kgとか、闇両替が横行している理由とか、フィレテと呼ばれるブエノスアイレスの美しき装飾文化とか。



『地球の歩き方』は確かに非常にコンパクトに、たくさんの写真で、超わかりやすく、初めて訪れる都市や観光名所を紹介してくれる。けれど、この本はあくまでも日本人向けの観光ガイドであり、決して『地球』を歩かせてくれるのではない。ペルー、ボリビアで多くの同じ本を持ち合わせた日本人と出会った経験から、僕も彼らもみんな『地球の歩き方』という日本人のために最適化され過ぎた狭い地球の上を歩かされていたのだな…と気付かされた。東京で言えば地元民はほとんど行かないロボット酒場に白人観光客が押し寄せているようなもの。楽しいのだろうが、やはりそれはガイドブックのページのように薄っぺらい。本当の東京は、旅先は、地球はもっと人間味豊かで深い文化に溢れている。

時間の限られた弾丸旅行にはガイドは必須かもしれない。しかし、時間に余裕があるのなら、旅の最中、1日だけでもガイドブックを置いて、気ままに街を歩いてみたい。地図の外側に、未知なるものが広がっているかもしれない。平凡な家々が連なっているだけだとしても、その事実をみずから気づけたことに意味があり、それは案外記憶の深いところに残る。

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