3/22/2013

東京生まれ東京育ちの東京知らず

東京生まれ東京育ちではあるけれど、東京のことはよく知らない。東京に限らず、もっと大きな日本や世界のことだってよく知らないし、さらには自分の家族のことだってろくに知らない。人間の個性とは何を知っているかによって作られるものではなく、何を知らないかによることも多いのではないか…などと考えたりする。
とにかく、長年連れ添った相手や住み暮らしている場所のことであっても、僕たちは知ろうと思いそのための行動をおこさなければ生涯知らぬままであることは多い。

靖国神社へ行って来た。
この場所を訪れるのは初めてではない。境内の中には東京の桜開花や満開を宣言するための標本木があり、桜観光の名所でもある。標本木の桜の花は綺麗に咲き誇りたくさんの見物客と出店で賑わっていた。東京、桜満開。

今回靖国神社を訪れたのは、桜見物のためではない。広島・長崎と「日本の戦争と平和」について見て考える旅の終着点として、近いけれど遠く、生まれ育った地にあるのによく知らなかった、鎮魂の地としての靖国神社を訪れてみたかった。靖国神社は首相の公式参拝問題などで取り上げられていたのでなんとなくその神社の生い立ちは知っていた。戊辰戦争から東アジア太平洋戦争での戦死者が祀られている。ここに眠る御霊の数は240万になる。

僕は首相の靖国神社参拝問題には反対であった。
「隣の国や周りの国が嫌だって言ったり止めろって訴えてるのになんで強行する意味がわからない。争いが増えるだけなんだから自粛すればいい。だから反対。」
そういった未熟なものだった。
靖国を巡っての昨今の様々な論議を読んでみても、いまいちピンとこない。それは当然で、なぜなら靖国が何かを知らず見たこともなかったのだから。だったら、他人の論議に耳を傾ける前にまずは自分自身で見るべきだと常々思っており、それを実行に移した。

靖国神社の本殿自体は普通の大きな神社である。それよりも、その横にある戦争の歴史を語り残す目的の博物館である「遊就館」が目的であった。パンフレットの最初のページには、
「英霊のまごろや英霊の御事績を知ること…」
「愛する祖国、愛する故郷、愛する家族のために、尊い命を捧げられた英霊のまごころやご事績に直接触れることによって、大切な何かを学ぶことができるのではないでしょうか。」
とある。なんとなく、気が引けてしまうような文面である。それでも、足を館内に向けた。

感想を簡単に言う。
僕は泣いた。「死んだら、靖国で会おう」と誓って別れた日本兵の話。愛する妻や子供に宛てた遺書。入ってすぐのホールで上映されているドキュメンタリー「私たちは忘れない」は、僕の知りたかったこと感じたかったことが詰められたものだった。
それと同時に、ここで語られていることは日本側からの歴史認識だけであることもわかった。しかし、この認識の仕方を僕らに強要するものではないように感じた。純粋に、日本が戦争を経験してきたことを忘れないでいよう。今、日本があるのはそのときに亡くなった数々の人々のおかげなのだから彼らの思いを残していこう。そんなメッセージだけが伝わってきた。また訪れてみたいと思ったし、「ありがとう…」と手を合わせたくなった。

靖国問題の本質が解った。そして難しくなった。いま、仮に僕が日本国の首相であり、靖国神社を参拝することを先に述べた理由で一切やめろと問われれば、悩むだろう。日本を代表して働く首相として、この国のことを強く思えば思うほど靖国神社に眠る御霊への感謝の念は募る。歴史事実はひとつでも、歴史認識は国の数だけあるのだから、他国の歴史認識を認めていくというのは日本を否定することで、それは戦争で亡くなった人々の気持ちを踏みにじることでもある。そんなことはしたくない気持ちも生まれている。

安倍首相は靖国神社に参拝するのだろうか。戦略的に自粛を続けるのか。本当の感情を大切にするのだろうか。僕達日本人や近隣アジアの国の人にどう説明するのか。
これは決して安倍首相だけでなく、グローバルになった昨今では僕達一人ひとりが認識して考える問題であるとぼくは思う。

日本のために何かをしたいと考えるのであれば、一度はゆっくりと時間を作って足を運んで見て欲しい。日本に生まれ育ったすべての人に。

日本の国花、菊の紋と満開の桜を見ながら考えた。









2 件のコメント:

  1. 広島で会ったアキです!久しぶり。
    このブログ読んで靖国神社行かずにはいられないわ〜ってことで来週中に行ってくる!

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  2. アキ、コメントありがとう!
    うん。是非行って見て欲しい。海外に出た経験があって日本を思ったことがあるならば、得られるものは大きいはず。
    こっちでもまた会って飯食べたいね:)

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