2/26/2013

韓国の国花、槿から思うこと

2月26日付け朝日新聞朝刊の天声人語より一部を抜粋。
昨日就任された韓国初の女性大統領朴槿恵の名前の中にある花について。

 ひとつの花を眺める心も、国によって違う。朝に開いて夕方しおれる槿(むくげ)は、日本では儚さの象徵とされる。だが、お隣の韓国の人々は、苦難をしのいで発展していく民族や国の姿をこの花に託した。知られるように国花である。
 一輪一輪は短命でも、一つの木として見れば次々に咲いて秋まで果てることがない。だから韓国では無槿花(ムグンファ)と呼ぶ。彼の国の朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領は、長女の名前にその「槿」を入れた。時点と首っ引きで選んだそうだ。きのう就任した朴槿恵(パク・クネ)大統領(61)である。
(中略)
 日韓関係は呪文のように「未来思考」が言われながら、思うように進まない。暖まったかと思えば、寒の戻りの冷え込みが繰り返されてきた。歴史と領土の問題で、新大統領も甘い友ではありえまい。
 槿に戻れば、韓国の人は日本の植民地支配をしのいだ歴史を、この花に重ねたとも聞く。海峡の波は高い。行き交う言葉が日韓新政権のもとで未来に向くか、どうか。よく見守りたい。

隣国・韓国の国花が槿であり、リーダーとなる朴槿恵大統領の名前の中にその花が入っていることを初めて知った。槿とはどんな花なのか。調べてみた。

槿(Hibiscus Syriacus)
wikipedeia-「槿」より。
 学名にもあるようにハイビスカス属の花のようで、なるほど大きな5片の花びらと真ん中の特徴的な花冠などの形状は南国に咲く真っ赤なハイビスカスと似ている。けれど、色合いと佇まいから感じられるものはアジアの風情。栄枯盛衰。儒教文化のおしとやかさだろうか。


日本の国花は桜と菊である。皇室の象徵としての意味合いが強い菊の花はギラつていていて、「国花である!」と自他に見せるびらかすにはなんとなく気が引けてしまう。他方の桜は、嫌いだという日本人はあまりいない。名実ともに国花としての地位を築いているようである。天気予報に桜前線なる桜の北上行進具合が日々告げられるようになる日も近い。今週末はもう、3月。


他国の国花も調べてみると、アメリカは「バラ」と「セイヨウオダマキ」、中国は「牡丹」と「梅」、フランスは「ユリ」、スペインは「カーネーション」に「ザクロ」、などなど。国花の選定方法に決まりはないため、国によってはしっかりと定まっていなかったり周知の事実や人気投票で自然発生的に決まった花もあるのだとか。それでも、なんとなく、国花からその国の人柄も想像させられる。


天声人語の書き出しにもあるように、槿の花に対する印象は日本と韓国で少し異なるようだ。同様にして日本の国花である桜の感じ方も日本人と韓国人、その他の国出身の人では異なるだろう。「桜前線」がテレビ放送されるなんておかしいだろ!と、もしかしたら他国の人には不思議がられている日本独自の文化のひとつかもしれない。先日書いた「美しさを判断の基準にする」の中にあるように、美的感覚は人や国でそれぞれ異なる。それが個性をつくる。日本の感性を韓国に押し付けず、また韓国の感性を否定せず、お互いに認め合い競い合い成長しあえる日韓関係になれればいいと願う。国同士も、僕と僕の韓国人の友人とも。


真っ赤なバラやカーネーションでも、見栄えのするユリでも牡丹でもない、ほのかな色と儚さに美と盛衰を見て取れるデリケートな感性を心の奥で日本と韓国は共有している気がする。留学中も、ヨーロッパからきた白人達のなかで目に見えない圧迫感や劣等感を感じる中、一緒にいて心通じ安心することができたのは韓国人の友達だった。そのときの感性をこれからも忘れずに過ごしていきたい。


木槿の見頃は6月から10月。今年は桜咲き誇り散った後にも気になる花の存在ができた。嬉しいことである。

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