4/07/2013

サン=テグジュペリ『人間の土地』

『星の王子さま』で有名なサン=テグジュペリ。
その出版に先駆けること4年前、飛行士としての経験から得られたコトを綴ったエッセイ集を彼は書いている。『人間の土地』。


僚友との別れ、戦争が終わり商業としての役割を担う飛行機、砂漠での不時着事故から経験した人間の極限…
なんで、サン=テグジュペリは『星の王子さま』を書けたのか。人間の本質を見抜くに至った経験とそこから生まれた思考が、「原石」のまま書かれている。
《とかく男の子というものは、駆けずりまわったり、難儀をしたりすることで、自分を強いと思っているものなのですよ》(同書p80)
僕は小さい頃から遠くへ遠くへ行くこと、冒険をすることが大好きだった。毎日のように自転車で街中を駆け回り、ときにはとにかく遠いところまで行き、日が暮れて場所がわからず迷子になり、ものすごい不安にかられて… そんなことを繰り返していた。それは今もほとんど変わらない。その行き先が、荒川の土手なのか、東京の街中なのか、インドの聖地なのか、チュニジアの砂漠なのか、それだけの違い。引用した文にあるように、そうやって、自分を強いと思いたがっているだけなのだろう。

少し訳が難解だったけれど、咀嚼し嚥下し吸収すると、ハッと気がつくほど素晴らしいことを言っている。心に残った言葉をインターネット上で見つけた英文と一緒に残しておく。備忘録。ときおり戻ってきたいな…そう思わせる本のリストに仲間入り。

以下、本文より引用。

 《何ものも、死んだ僚友のかけがえには絶対になりえない、旧友をつくることは不可能だ。何者も、あの多くの共通の思い出、ともに生きてきたあのおびただしい困難な時間、あのたびたびの仲違いや仲直りや、心のときめきの宝物の尊さにはおよばない。この種の友情は、二度とは得がたいものだ。樫の木を植えて、すぐその葉かげに憩おうとしてもそれは無理だ。
 これが人生だ。最初ぼくらはまず自分たちを豊富にした、多年ぼくらは木を植えてきた、それなのに、やがて時間がこの仕事をくずし、木を切り倒す年が来た。僚友たちが一人ずつぼくらから彼らの影を引き上げる。かてて加えて、ぼくらの喪に、今日以後、人知れぬ老いの嘆きが来て加わる。》 (p41)
“Nothing, in truth, can ever replace a lost companion. Old comrades cannot be manufactured. There is nothing that can equal the treasure of so many shared memories, so many bad times endured together, so many quarrels, reconciliations, heartfelt impulses. Friendships like that cannot be reconstructed. If you plant an oak, you will hope in vain to sit soon under its shade.
For such is life. We grow rich as we plant through the early years, but then come the years when time undoes our work and cuts down our trees. One by one our comrades deprive us of their shade, and within our mourning we always feel now the secret grief of growing old.  

 《人間であるということは、とりもなおさず責任をもつことだ。人間であるということは、自分には関係がないと思われるような不幸な出来事に対して忸怩たることだ。人間であるということは、自分の僚友が勝ち得た勝利を誇りとすることだ。人間であるということは、自分の石をそこに据えながら、世界の建設に加担していると感じることだ。》(p58) 
“To be a man is, precisely, to be responsible. It is to feel shame at the sight of what seems to be unmerited misery. It is to take pride in a victory won by one's comrades. It is to feel, when setting one's stone, that one is contributing to the building of the world.” 

 《たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが、自分たちの役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になりうる、そのときはじめて、ぼくらは平和に生き、平和に死ぬことができる、なぜかというに、生命に意味を与えるものは、また死にも意味を与えるはずだから。》(p224)

 《戦争を拒まない一人に、戦争の災害を思い知らせたかったら、彼を野蛮人扱いしてはいけない。彼を批判するのに先立って、まず彼を理解しようと試みるべきだ。》(p217)

 《愛するということは、おたがいに顔を見あることではなくて、いっしょに同じ方向を見ることだ。》(p216) 
“Love is not just looking at each other, it's looking in the same direction.”  


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